4月16日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

240416001

今回はいつもと趣向が違いまして、谷口さんが取り上げましたのは、毬矢まりえさん、森山恵さんが翻訳された「A・ウェイリー版 源氏物語」でした。

谷口さんがこの翻訳本を知るきっかけとなったのは、「大草原の風トリオ」の朗読パフォーマンスのために谷口さんが朗読を習っている先生の元に、翻訳をされた毬矢まりえさん、森山恵さん姉妹から直接朗読の依頼があった、という話を先生から聞かれて、とのこと。

毬矢まりえさん、森山恵さんはともに文学少女で、百人一首も大好きで源氏物語も大好きな姉妹。
方やフランス文学家であり歌人、方や英文学家であり詩人。
そんな二人が、「訳したい!」という情熱を注いで訳したのが、「源氏物語」のアーサー・ウェイリーが英訳版です。

1000年の昔に、紫式部の手によって生まれた小説「源氏物語」。
900年の時を経て、アーサー・ウェイリーが英語で翻訳するきっかけとなったのは、アーサー・ウェイリーが大英博物館の東洋版画・写本部門の学芸員として勤務していた時に、「源氏物語の十二帖“須磨”」の絵を目にして「この作品を読んでみたい!」と思ったこと、とのこと。

アーサー・ウェイリーが教育を受けていた時代はイギリスのヴィクトリア朝時代。
そのため、源氏物語が描く日本の“パレス生活”の世界が、当時のイギリス読者には「華やかなりしヴィクトリア朝のパレス物語」として彷彿させたのかもしれない、と谷口さん。

そのアーサー・ウェイリーが訳した「源氏物語」を100年の時を経て、現代語訳した毬矢まりえさん、森山恵さんの訳本。
アーサー・ウェイリーが訳した世界を活かしつつ、歌人・詩人らしく、アーサー・ウェイリーが内容は訳しつつも全部を訳さなかった和歌を全部入れるなど、源氏物語がお好きな姉妹らしい訳本となっているそうです。

また、一度、英単語になっているものを日本語にしているので、古文を現代文に訳した源氏物語よりも読みやすくなっている、と谷口さんはおっしゃっていました。

アーサー・ウェイリーが訳した「源氏物語」は欧米でも当時も、そして今でも評価が高く、それこそが「翻訳」のすばらしさだ、と谷口さん。
翻訳本は、文学作品を、国を、そして時代を超えさせることができるのですね。