本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

本日、谷口さんがご紹介くださいましたのは、ローラ・インガルス・ワイルダーの「大草原の旅 はるか」です。

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大草原の旅 はるか」は、「A Little House Traveler」の翻訳本ですが、中身は全く一緒、というわけでは実はありません。
「A Little House Traveler」は3部構成になっていますが、そのひとつ「On The Way Home」は、「大草原シリーズ」の10冊目「わが家への道」として既に翻訳出版されているものなので、それを除いた2部、「West from Home」と「The Road Back」の訳が収められています。

「West from Home」は1915年にサンフランシスコで開催された万博を観に、その時サンフランシスコに居たローラの娘 ローズを訪ねがてら行った時に、農場の世話のために家に残った夫 アルマンゾに宛てた数々の手紙集です。

そして「The Road Back」は1931年(この年のすぐ後に、最初の「大草原シリーズ」の本が出ます)に、夫アルマンゾとともに二人で車で、ローラが育った街やアルマンゾと出会った街を訪ねた時の旅日記です。

2作品とも、元はまだローラが作家デビューする前の私的な手紙や日記で、まさか衆目にさらされるとは想像もしていないものです。

ローラのお話の度に谷口さんがおっしゃるのは、
「ローラの作家としての表現力を磨いたのは娘ローズ。ですが、ローラは作家の原石としてはもうすばらしかった」
ということです。

そしてこの「大草原の旅 はるか」を読むと、その片鱗が随所に感じ取れます。
たとえば。
谷口さんが好きな箇所のひとつが、ローラが生まれて初めて海を見るシーン。
後期心旺盛なローラは、海の中に進み出て足を浸します。
その感動を綴ったアルマンゾへの手紙の中に、こんな一節があります。

「ねえ、考えてもごらんなさい。中国や日本の海岸を洗っていたその同じ海水が、海を渡ってやってきて、わたしの足をあらったのですよ」

ローラのユーモアセンスと鋭い観察眼が随所に散りばめられた私的記録作品「大草原の旅 はるか」。

そしてその集大成的な私的記録稿「パイオニア・ガール」の訳本が年末出版に向けて、着々と進行しています。



次回の茶論トークは8月22日、サウンド・オブ・ミュージックのトラップファミリーの長女の回想録「わたしのサウンド・オブ・ミュージック」のお話です。