6月27日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はノーマ・ジョンストンの「ロッタの夢ー オルコット一家に出会った少女」でした。

この本は新刊です。
谷口さんがこの本の原作を手に入れたのは1990年代のこと。ちょうど、若草物語に関する写真集を作っていた時期に当たるそうです。
この本の出版に時間がかかった理由の一つが、「ノーマ・ジョンストンさんの所在が特定できていない」ということ。ノーマ・ジョンストンさんが書かれた作品は多数あるのですが、本人の特定ができていない作家でもあるそうです。

作品自体のお話は、若草物語の作者、ルイザ・メイ・オルコットを含むオルコット一家がボストンに住んでいた時代に、ドイツからの移民家族とアイルランドからの移民家族とオルコット家の交流を描いたものです。
オルコット一家に関する部分はノンフィクションですが、ロッタを初めとするドイツからの移民家族、そしてアイルランドからの移民家族はモデルがいたのかもしれませんがフィクションです。
しかし、お話は、あたかもノンフィクションかのように、実にリアルに感じられる内容となっています。

そのひとつには、オルコット家が実際に暮らしていたボストンの当時の様子や街並みのレファランスがしっかりと描かれていることもあります。
谷口さんが訳された「ルイザー若草物語を生きた人」の原作者でもあるノーマ・ジョンストンですから、ルイザに関する手紙や日記もしっかりと読み込んでいますので、その辺りも「ロッタの夢ー オルコット一家に出会った少女」のリアルさを与えているのかもしれません。

小説の中で、第12章でロッタ少女の誕生日をオルコット一家も一緒に祝うシーンがあるのですが、この部分、若草物語を読んでいる方には、うれしくなるようなレファランスが出てきます。

また、この本の原題は「Lotta's Progress」なのですが、これは「The Pligrim's Progress」を意識してノーマ・ジョンストンが付けているタイトルとのことです。
The Pligrim's Progress」はオルコット一家の日常でも、そしてオルコット一家の日常をベースにした「若草物語」にもレファランスとして出てくる小説。そんなところにも、作者ノーマ・ジョンストンのルイザへの想いが現れている物語です。