2月21日は、「いろんなワインを味わいたい/ワインのことをもう少し識りたい」方に向けて開催しております体感型ワイン・テイスティング講座、「Wine Lovers Club」を開催しました。
テイスティング下さいました皆さま、ありがとうございます♪

2025年2月から「南アフリカ」のワインを取り上げます。

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南アフリカ共和国は、インド洋と大西洋にはさまれたアフリカ大陸の最南端に位置します。
南アフリカ共和国はサバンナのイメージがありますが、サバンナはもちろん、南アフリカ共和国には山岳地帯や半砂漠地帯、低木地や草原、熱帯気候に地中海性気候・・・場所によってさまざまな表情がある産地です。

 南アフリカ共和国の葡萄栽培地域は南緯34度を中心に位置しています。これはチリ、アルゼンチン、オーストラリアなどのワイン産地と同緯度。穏やかな地中海性気候、豊富な日照時間、降水量500~800mm、海からの冷たいそよ風。葡萄栽培に適したすべてがここにあるといわれるほどです。さらに地域ごとに微小気候(マイクロ・クライメット)とヴァラエティーに富んだ土壌(テロワール)が存在するため、それぞれの地区で個性豊かな南アフリカのワインが生み出されています。

南アフリカの国土の大部分は、日照時間が長く温暖です。その中でも特にワイン産業の中心である西ケープ州は、大西洋とインド洋の二つの大洋に挟まれ、夏は温暖で乾燥、冬は冷涼で降雨があるという地中海性気候を示し、ブドウ栽培に最適な気候の下にあります。海岸沿いで発生する霧がブドウ畑の直射日光を和らげ、南極からの冷たいベンゲラ海流の上を通ってくる冷涼な海風(ケープ・ドクターと呼ばれる風)が畑の温度を涼しく保ってくれるのです。

また、恵まれているのがケープ地方の土壌です。ここの土地は、10億年以上も前に遡ると言われる世界で最も古い土とされており、多様性に富んでいます。
(フランスのシャブリでも土壌は約1億8000年前。また、ヒマラヤ山脈の歴史よりも10倍古いのだそうです。10億年前というと、生物が生まれるか生まれていないか、くらいの時代だそうです。)

南アフリカワインの特徴の一つは「環境と調和したワイン生産」です。

1998年に制定されたIPW(Integrated Production of Wine)は世界で最も厳しいワイン生産のガイドラインです。自然環境の保護とワイン生産者が長く永続的にブドウ栽培が出来ること、この2つを両立させることが目的です。

さらに驚くことは、2004年世界自然遺産に登録された『ケープ植物区保護地域群』の中に葡萄畑が広がっているという事実です。

南アフリカは「花の楽園」と呼ばれるほど、全土に約22,000種もの多種多様な花や植物があり、ブドウ栽培が広がるケープ州には、世界自然遺産に指定された90,000平方キロメートルにも及ぶ広大なケープ植物区保護地域群があります。ここだけでも9600種の花と植物がある世界で最も密集した植物区で、驚くべきことに、そのうちの70%は他の地域で見られない固有種とされています。

そして、ケープ地方のワイン産地の95%がこの保護区内にあります。つまり、この豊かな植生を守っていくことが南アフリカのワイン生産者の使命であり、その為農薬を減らし、自然環境を保護しながらブドウ栽培やワイン生産を行っています。

南アフリカワインの特徴のもうひとつが「ワイナリー就労者の労働条件の向上」です。

1990年代前半にアパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃されてから南アフリカ・ワインは急激に発展を遂げています。ワインの生産量は劇的に増え、輸出量はアパルトヘイト時代に比べ20倍になりました。

しかし黒人の貧困問題は未だ続いています。2002年にはワイン業界での労働者の待遇と労働環境を監督する組織として、ワイン産業倫理貿易協会(WIETA:Wine Industry Ethical Trade Association)が設立され、葡萄畑とワイナリーでの労働環境の改善、児童労働の禁止などの基準が設けられました。
また、2003年には、黒人の経済活動、雇用条件の改善を目的とした黒人権利拡大政策(BEE)が実施。

更に2012年には、「ワイン&スピリッツ常任委員会(WSB)」と、「南アフリカ・ワイン協会(WOSA)」が協力して、これまでのワイン法、自然環境の保護に、労働環境の改善も加えた新しい協定が結ばれました。

このような環境保護や労働環境の改善などの制度に後押しされたことも背景にあり、南アフリカには、ワインの販売を通してより積極的に、人々の生活環境や自然保護、教育支援などに取り組む社会貢献的なワインが沢山あります。

このように南アフリカは、自然環境の保護とワイン産業の発展の両立、さらにワイナリー就労者の労働環境の改善に取り組んでいる、まさに応援したくなるワインなのです。


今回は、2012年ロンドンオリンピックオフィシャルワインにも採用されたワイナリーの手掛ける、南アフリカの特徴的な品種を使ったのワインを実際に味わって、感じていただきました。

今回取り上げましたワインのノートは下記のとおりです。

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