U_U 's blog

東京都文京区小日向のGalleria Caffe U_U(ユー)の日々を綴るblogです

あしながおじさん

【Salone report】 2022.6.28 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

6月28日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学は「あしながおじさん」でした。

あしながおじさん」は、ジーン・ウェブスターが1912年に発表した児童文学作品。
孤児院で育った少女ジュディの文才が一人の資産家の目にとまり、毎月手紙を書くことを条件に大学進学のための奨学金を受ける物語です。
日本では1919年に初めて翻訳本が出ていて、その時の翻訳本のタイトルは、原書のタイトル「Daddy-Long-Legs」の虫の名前の日本語訳と資産家の仮の名前ジョン・スミスから「蚊とんぼスミス」。
1933年の翻訳本から「あしながおじさん」が使われ、以降、そのタイトルが使われています。

谷口さんも「あしながおじさん」のタイトルで翻訳、表紙のデザインは原書のウェブスターの手による挿し絵を使用しています。


谷口さんが常々仰っているのは、翻訳本は「日本語の文学として愉しめることが大切」ということ。
特に児童文学を読む子どもたちは、外国を舞台にした日本の作品と思って読む可能性もあるのですから。
ですので、原書は厳然として存在するのだけれども、翻訳本は時代の読み手に合わせた言葉で書かれていってよいものであるし、何年にもわたって翻訳され続けるということは、それほどに原書の物語が魅力的であることになります。

今回の茶論トークでは、谷口さんが1919年に出版された翻訳本と谷口さんの翻訳本の同じ個所を読み比べてくださいました。それは主人公のジュディが、ほかの子たちはもうすでに読んでいる文学作品を時間を作って読んでいる、というシーン。
原書の中で、ジュディがおじさまに「「Little Women」を読んだから、もうライムのピクルスのこともわかるわ」と報告しているシーン。
日本で「Little Wemen」が「若草物語」のタイトルで出されたのは1934年のこと。
なので、1919年当時は違うタイトルの翻訳本名になっています。


あしながおじさん」翻訳にあたっての、谷口さんならではの工夫も随所になされています。
たとえば、ジュディが書いたものとしてウェブスターが書いている手紙中の挿し絵のキャプションの翻訳の手書きは、女子大生ジュディが書いたようにするためにした工夫だったり。
ジュディがおじさま宛に書くときに、いろいろな感情(時には怒って書いているときも)で原書に書いてあるのを、宛名で表現したり。

細かなところでは、作品中、アラバマ州の“ビショップ”が講演に訪れたことを報告する手紙を訳するにあたり、カトリックとプロテスタントでは“ビショップ”の日本語訳が異なることから、ジュディの通う大学のモデルにしたウェブスターの母校ヴァッサー・カレッジにウェブスターが学んでいた当時カトリックとプロテスタントのどちらであったかを手紙にて問い合わせたそうです。
その答えは・・・、谷口さんの翻訳本で確かめてみてください。


また「あしながおじさん」でいつも話題になるのが、続編「Dear Enemy」の訳本が今の時代出すのが難しい、という話です。
それは、その当時のアメリカの時代状況を反映した箇所が、今の時代では差別的表現になってしまうため、です。
このように、翻訳されていないために知られていない英米児童文学もあるのです。

【Salone Report】 谷口由美子の茶論トーク 英米児童文学の楽しみ

本日は、翻訳家 谷口 由美子さんによります、谷口さんが翻訳を手掛けられた作品の魅力をお話いただく茶論トーク「英米児童文学の楽しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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本日お話くださった作品は2つ。
最初は、キャロル・ライリー ブリンク作の「ミンティたちの森のかくれ家」です。
原題は「Winter Cottage」。
時代は1930年代のアメリカ。まさに大不況の真っ只中。
ウィスコンシンの秋に、夏の避暑地で立ち往生した親子が空家となっている夏の別荘をこっそり間借りして冬のあいだを過ごすお話。
春を迎えるまでにさまざまな出来事が起きるのですが・・・。

 このお話、私は正直知りませんでした。
ですが、この本はアメリカ児童文学の黄金期に生まれた名作のひとつです。
作者のキャロル・ライリー ブリンクは幼い頃に両親を亡くし、祖母に育てられます。
祖母は開拓時代を生きた人で、それもあって作者は開拓時代の話を聴いて成長します。

1930年代のアメリカは戦争にこそ参加はしていませんが、資本主義が行き詰まった時代。
その時代は、人々に本を読む時間を与えました。
そしてその時に読まれた本は、ローラ・インガルス・ワイルダーが書いたような「何もない時代を生き抜いた」開拓時代の話でした。

茶論トークではいつもパウンドケーキをお出しするのですが、今回は「ミンティたちの森のかくれ家」のキーワードでもある「パンケーキ」をお出ししました。

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ちなみに2月17日の火曜日は、ちょうど英国やアイルランドのパンケーキ・ディにも当たります。 

ブレイクを挟んで、次に紹介くださったのは「あしながおじさん」。
今回は、大正時代に訳された「かとんぼスミス」の訳を紹介していただきました。
翻訳本は、原文は変わりませんが翻訳は時代に合わせて変わっていく作品だと、谷口さんがご説明くださいました。
「小説は常にNEWSである」の言葉どおりなのですね。

 

【4月9日のイベント】 英米児童文学の楽しみ ~翻訳家 谷口由美子の茶論トーク~

2月より始まりました、「大草原の小さな家」シリーズをはじめ、「赤毛のアン」、「若草物語」、「サウンド・オブ・ミュージック」など、多くの英米児童文学の翻訳をされている谷口 由美子さんにお越しいただき、それぞれの作品にまつわる魅力的なエピソードをお話いただくお茶会、
英米児童文学の楽しみ  ~翻訳家 谷口由美子の茶(サロン)論トーク~

物語の世界と実際の原作者の生活との関係性とか、
舞台化または映画化されるにあたって変更された部分やその理由とか。

今でもその瑞々しい魅力を持ち続ける英米児童文学が、もっともっと読んでみたくなる♪
そんなお話に溢れるお茶会です。

大人の方はもちろん、これから英米児童文学に出会うお子さんにも参加して頂けたらと思います。

次回は 4月9日 14:00 から、『「あしながおじさん」の世界』についてのトークです。

お問い合わせまたはお申し込みは、03-3944-2356 カフェ ェ バール ユウにお電話いただくか、もしくは[u_u_info]宛てにメールにて、ご一報くださいませ♪


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