本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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本日谷口さんがご紹介くださった英米児童文学はシド・フライシュマン作の「身がわり王子と大どろぼう」です。

シド・フライシュマンはたくさんの作品を世に出しているアメリカの作家。
特に1960年以降に児童文学を書いています。
少年時代に奇術に興味を持っていたという経歴の持ち主。
実にたくさんの面白い作品を生み出している作家です。

本作「身がわり王子と大どろぼう」は1986年の作品で、1987年のニューベリー賞受賞作品となっています。
原題は「The Whipping Boy」。

この本について、「この本に書いてあることは事実ですか?」という読者の質問に対して、シド・フライシュマンは
「この本は想像で書いた物語ですが、書いてあることは事実です」
と答えています。

“Whipping”とは“ムチで叩く”という意味。
“The Whipping Boy”はこの場合は「ムチで叩かれている少年」という意味になります。

中世の頃は、王族の子息に直接体罰はできないため、代わりに体罰を受ける少年が居たそうです。
本作の主人公ジェミーもそんなひとり。
勉強にやる気のない王子、そんな勉強をしない王子への見せしめとして代わりにムチで打たれるジェミー。
ジェミーの方がどんどん吸収し、字も書けるようになってしまいます。
そんな設定がストーリーの中でとても活きる冒険物語。
ちょっと抜けたどろぼうが出てきて、冒険を通じて王子も成長していき・・・といったお話です。


ストーリーや作者の紹介とともに、今日、谷口さんがお話になったのが「翻訳者を悩ますこと」。
それは、原作の中の方言のニュアンスをどう日本語で表現するか?といったことです。

「赤毛のアン」の翻訳をされた村岡 花子さん。
原作でマシューがよく口にする言葉“well...”を村岡さんは「そうさなぁ」と訳しています。
実はこれ、村岡さんの出身地の甲府の言葉なのだそうです。

言葉のニュアンスを違う言語でも感じさせる工夫。
これは翻訳者を悩ますことでもあり、腕の見せどころでもあるそうです。

特に児童文学は、「直に読んで面白いかどうか」がとても大切な文学作品。
解説や注釈に頼らずに、面白さが伝わることが求められるそうです。

原作のある日本語文学。
それが翻訳本なのです。