本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

本日、谷口さんがご紹介くださいましたのは、アガーテ・フォン・トラップの回想録「わたしのサウンド・オブ・ミュージック」です。

170822002

「サウンド・オブ・ミュージック」が実際の話をベースにしていることは今ではよく知られています。
ですが、茶論トークではいつも話題になるのですが、舞台や映画は“よりドラマティック”な話になるように、フィクションが織り交ぜられます。

「サウンド・オブ・ミュージック」もいろんなフィクションが加えられています。
お父さんのゲオルグが厳格な人に描かれていたり、兄弟の一番上が女性になっていてその名前がリーズルとなっていて、リーズルにはロルフという男性とのロマンスがあったり・・・。

このようなフィクションで構成された舞台を見たとき、トラップ・ファミリーの人々はショックを受けたそうです。

しかし、この舞台や映画を見て感動し、「勇気をもらった」とトラップ・ファミリーに伝える人も多く、実際には2番目の子供、長女のアガーテさんは「作品」と「自分たちの想い出」を分けて愉しめるようになっていったそうです。
また、作品を通じて描かれているトラップ・ファミリーの「精神」はきちんと描かれている、と理解するようになったそうです。
それと並行して、「“本当”のサウンド・オブ・ミュージック」を書籍として残すことをされました。


「サウンド・オブ・ミュージック」の原書でも、物語は修道院から家庭教師としてマリアが派遣されるところから始まります。そのため、アガーテさんたちの実の母親「アガーテ・ホワイトヘッド」さんのこと、そしてマリアが来る以前の「トラップ一家」の話は記されていません。
長女のアガーテさんは、実母アガーテさんのことも書籍で残しています。

茶論トークでは、TBSで放映された「2004年のトラップ一家」の方たちをドキュメンタリーとして制作した番組映像を鑑賞しました。


実は谷口さんはアガーテさんと何度もお会いしたことがあるそうです。
お会いになったからこそ、書籍などに記されていない情報を聞き出せたりできたり、いろんな資料も拝借できたそうです。

文字の訳だけではない、作者や関係者との直接の関係で得られた厚みのある翻訳。
谷口さんの翻訳の醍醐味です。


次回の茶論トークは10月17日、大草原のローラシリーズの原典「パイオニア・ガール」の出版直前のお話です。