本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

本日、谷口さんがご紹介くださいましたのは、児童文学者「石井桃子」さんです。

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いつもは谷口さんが翻訳された英米児童文学を紹介くださる茶論トーク。
今回はちょっと切り口が変わっての開催となりました。

石井桃子さんにとって運命的な出会いは、1933年のクリスマス。
その頃親しくしていた犬養毅家でのクリスマスに、「The House at Pooh Corner」と出会います。
その運命的な出会いを、石井桃子さんは「原作の体温を感じた」と述べたそうです。

プーを始めとするクリストファー・ロビンを中心にしたファンタジーのあまりの愉しさにひとり笑いながら読んでいると、犬飼家の子供たちが「なにを笑っているの?」と尋ねました。
そこで、石井桃子さんはその場で訳しながらお話を聞かせたそうです。
これが後に、翻訳本「プー横丁にたった家」になっていきます。

谷口さんが常々おっしゃっていることですが、
「英語の本を読める人」と「原作の雰囲気を掴める人」とはまったく違うそうです。
そして、翻訳本にとっては、「誰が最初にその本と出会い、訳したか」がとても大きいそうです。

原作が持つすばらしい世界を表現することで、読者は惹きつけられ、そして翻訳家も「自分も訳してみたい」と思う。
それがとても大きい、と。

翻訳本は「英文和訳」のテスト答案ではない。
だから、「ここの訳は間違えているのではないか?」と、本全体の中の一部を論うような批評は的外れなところもある。

翻訳家に求められることは、「原作の雰囲気」と「現在の読者」とをつなぐ文学作品を創ること。
そこに翻訳家の手腕が問われます。
そのためには、原作の雰囲気を掴むことができる「良き読者」の存在も問われるのではないでしょうか?

また石井桃子さんの翻訳本にも時折見られることで、谷口さんが常々おっしゃることですが、
読者である子供にとって、「えっ?」と思うような言葉を織り交ぜることも、本に惹きつけられる理由なのだそうです。
「これってなんのことだろう?」
という引っかかりを頭に残す文学。
その引っかかりが成長する過程で分かったとき、子供はひとつ成長を遂げます。

つまり良き児童文学とは、「子供のために噛み砕いた本」ではなく、「子供にひとつ成長した段階へと誘う本」なのですね。
そしてそのような翻訳本だからこそ、大人になって読んでも惹きつけられるのだと思います。

児童文学者「石井桃子」を知るには、「石井桃子」さんの原点が理解できる、石井桃子さん著の「幼ものがたり」がお薦め、と谷口さん。
ご興味ございます方はぜひ♪



次回の茶論トークは6月6日、大草原のローラの本「大草原の旅はるか」のお話です。