本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の楽しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

本日、谷口さんがご紹介くださいましたのは、「子どもの本・翻訳の歩み事典」です。

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子どもの本・翻訳の歩み事典」は2002年にオープンした国際子ども図書館のプレオープン行事として2000年に開催された開館記念展での貴重な研究成果を土台に、時代解説、作品解説(数962点)、テーマ別コラム、紙上シンポジウム等を盛り込み、また、280点以上におよぶ書影などが掲載された、明治期以来、日本の子どもたちに読み継がれてきた翻訳児童文学を、時代の流れに沿って通観した大事典です。
谷口さんはアメリカの児童文学で携わられました。

この事典のコンセプトは「例え翻訳本であっても、日本語で訳された本は日本の児童文学である」とのことです。
実際に、明治時代など初期の段階では、外国の話を自分の作品として執筆されたものもあるそうです。

事典は明治時代から1979年までの児童文学の流れを8つに分けてまとめられています。

嘉永年間、その一部は江戸時代に当たりますが、この頃はオランダ語訳された本を日本語に訳されています。
このように元々英語など他言語の本が別の国の言葉で訳されたものを日本語に訳した本は「重訳本」と言います。「アラビアン・ナイト」などもそれにあたり、日本では英語訳された話をベースに訳本が出ています。
この場合、「欧米のフィルター」を一度通した話になっているので、「重訳」の場合、そのような理解が必要とのことでした。

他にも、話を簡略して出された訳本「抄本」や、外国人の名前や地名を日本の人名や土地名に変えて馴染みを持たせるようにした「翻案」など、文化的ギャップを感じずに日本の本として読めるような工夫を凝らした本もあり、その紹介も事典の中でされています。

子どもの本」 という概念は、「大人と違う層がある」という認識を新たにした、画期的な発想でもあるそうです。
日本では、大人向けの本も「子どもの本」として訳されたものも多くあります。

谷口さんはトークの中で、
「私たちは、「赤毛のアン」とか「あゝ無情」とか外国の話をよく知っていて、だから日本人は頭の中はずいぶんとグローバルなんだと思います」 
とおっしゃいました。
日本人のアイデンティティとして誇らしい点ですね♪ 

しかも翻案など、日本のモノとして広めようとした工夫など、当時の方の苦労と工夫が感じられ、その恩恵が今の翻訳文学の源流になっている意味では、すごいことと感じました。

ここで、茶論トークで出されたクイズを皆さんにもお出しします。
みなさん、わかりますか?
答えは問題文の下に白文字で書いていますので、マウスをあてて見ることができます。 

「クイズ翻訳タイトル今昔」 

1.通俗伊蘇普物語        A.アラビアン・ナイト
2.開巻驚奇 暴夜物語      B.モンテ=クリスト伯
3.絵本 鵞瓈皤児回島記     C.ヴェニスの商人
4.露国奇聞 花心蝶思録     D.シャーロック・ホームズ
5.西洋珍奇 人肉質入裁判    E.大尉の娘
6.泣花怨柳 北欧血戦余塵    F.レ・ミゼラブル
7.開巻驚奇 西洋復讐奇談    G.不思議の国のアリス
8.露妙樹利戯曲 春情浮世之夢  H.イソップ物語
9.鈍機翁冒険譚          I .ガリヴァー旅行記
10.噫無情           J.ロミオとジュリエット
11.愛ちゃんの夢物語       K.戦争と平和
12.英国探偵奇聞録       L.ドン・キホーテ

答え→ 1-H, 2-A, 3-I, 4-E, 5-C, 6-K, 7-B, 8-J, 9-L, 10-F, 11-G, 12-D 

次回は8月30日、L.M.モンゴメリ作「パットの夢」の茶論トークです。