本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学作品の魅力をお話くださる茶論トーク「茶論トーク 英米児童文学の楽しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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本日ご紹介くださいましたのは、ジェイン・ラングトンが書きましたアメリカのファンタジー作品「大空へ ジョージーとガンの王子」です。

 ファンタジー作品と言えばイギリス。
というくらいに名だたるファンタジー作品が生まれているイギリスに比べて、アメリカはみんなが知っているようなファンタジー作品はとても少ない国。
その中でも、こちらの作品はアメリカでは良く知られた作品とのこと。
ジェイン・ラングトンは、日本ではどちらかというと推理小説作家として知られているかもしれません。

この「大空へ ジョージーとガンの王子」は、アメリカではニューベリー賞の次点にあたる「オナー賞」を受賞しているのですが、さらに20年近く売り上げが落ちることなく愛読されている作品に送られる「フェニックス賞」も受賞しているロングセラーの作品でもあります。

この作品は、8歳の少女ジョージーがガンの王子と友好になり、ジョージーの夢だった空を飛ぶことを実際に飛んでしまうというファンタジー作品です。
繊細だけど空を飛びたいといろいろと挑戦するジョージー、それを理解して見守る家族、純粋な子供の心を歪んで取る大人、そして自分の正義感で状況を見る大人。
さまざまな視点が交錯するファンタジーでありながら、いろんなことを考えさせてくれる作品となっています。

谷口さんは訳された当時に実際に健在だったラングトンさんに会いに、この作品の舞台のコンコードに近い、ラングトンさんが住んでいる街を訪れています。
そこで実際に舞台となった家、湖や街などを見たことが、谷口さんは訳に大いに活かすことができたそうです。
コンコードといえば、「若草物語」の舞台でもあり、ルイザ・メイ・オルコットを始め、ニューイングランドの有名人が多く住んでいた場所。
本作にも随所にコンコードの有名人が出てきています。

この作品は、実はホール一家の物語シリーズ8冊のうちのひとつです。
残念ながら、ほかの作品は訳本として出版までには至っていません。
この訳本自体も、谷口さんが出会ってから実際に出版となるまで22年掛かっています。
正確には、2002年のハリー・ポッター・ブームでにわかに「ファンタジー本」が日本で売れだしたタイミングで出版できたのです。

世の中には、本当にたくさんの優れた作品があること。
それが手軽に読まれるようになるにはいろんなことがあること。
いろんなことを考えさせてくれます。