本日は、翻訳家 谷口 由美子さんに訳を手がけられた英米児童文学作品の魅力をお伝えいただく茶論トーク、「茶論トーク 英米児童文学の楽しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます。

本日、谷口さんが紹介くださったのはLMモンゴメリの「銀の森のパット」と「パットの夢」です。

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モンゴメリといえば、最近のTVドラマでも人気となりました「赤毛のアン」が有名です。
谷口さんは、「赤毛のアン」が日本で人気があるのは、モンゴメリの作品自体がすばらしいことはもちろん、村岡 花子さんの訳がとても良かったから、とおっしゃいます。

モンゴメリは赤毛のアンシリーズの他にも、大人向けのロマンス小説として7冊執筆しています。
この「銀の森のパット」と「パットの夢」のシリーズもそのうちのひとつ。
舞台は赤毛のアンと同じく、モンゴメリが生まれ育ったプリンスエドワード島です。

月明かりに照らされると白樺が銀色に輝く森、その美しさが大好きで、銀の森屋敷をずっと離れたくないと願うパトリシアことパットが主人公のお話です。
この作品が書かれた時代は、女性は20代後半で"オールドミス"と呼ばれ、結婚したら旦那さんの住むところに行くのが当然の時代の話です。
この時代の価値観を理解してこの作品を読むと、パットの価値観の特異性がより鮮明になってきます。

このシリーズは村岡 花子さんも訳そうをされていますが、最初に後編にあたる「ミストレス パット」が手元に届いたため、「パットお嬢さん」として訳本を出されています。
ちなみに、「ミストレス」は"女主人"と訳した方がよい言葉だそうです。
その後、前編にあたる「パット オブ シルバー ブッシュ」が届き訳に取り掛かったところで他界されます。
そのため、この本は村岡さんのお弟子さんが訳して出されています。
この本は、「銀の森のパット」⇒「パットの夢」の順で読むことを、谷口さんはお薦めされました。

また翻訳で工夫されたお話では、メイドのアイルランド出身のジュディの言葉の表現を紹介くださいました。
原書ではアイルランド訛りで書かれていますが、これを日本語訳するところで翻訳の方はいろいろと工夫が求められるそうです。
日本のどこかの地方の訛りを使うという方法もありますが、その訛りが分からないとそこで引っかかってしまい作品世界に入っていけなくなる可能性もあります。
谷口さんがどう工夫されたかは、ぜひ本を読んでみてください。