10月28日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学は、「8人のいとこ①、②」でした。

“若草物語”の作者として知られるルイザ・メイ・オルコットは、“若草物語”以外にもステキな作品を世に出していますが、この「8人のいとこ①、②」もそのひとつです。

8人のいとこ①、②」の作品の魅力に加えて、谷口さんからルイザ・メイ・オルコットの訳本についてのお知らせがありました。
そのひとつは、この茶論トークでも話題になっていたことについて、でした。
来年2026年は、“若草物語”の4巻目が出版された1886年から160周年、そして初めて「小婦人」として日本語訳本が出た1906年から120周年。
この年に、いよいよ谷口さんの訳で・・・というお知らせがありました。

そして、「8人のいとこ①、②」の魅力のお話。
お話は、孤児になってしまった女の子 ローズが主人公。
ローズの叔父にあたるアレックおじさんに引き取られ、ローズのいとこにあたる7人の男の子と出会い、物語が始まる“ヤングアダルト小説”です。

8人のいとこ①、②」では、出版された当時のアメリカの白人社会の世相でもある「ルーツであるヨーロッパへの憧れ」がベースに組み込まれています。
また、アレックおじさんはローズを引き取るだけではなく、いろいろな教養も与えていくのですが、たとえば「喫煙や飲酒は身体に良くない」だったり、ローズの結婚にまつわる女性観など、「8人のいとこ①、②」の作品を通じて、作者 ルイザの思想も表れています。
物語の詳しい内容は、ぜひ、作品をお読みになっていただければと思います。


谷口さんは、「8人のいとこ①、②」を訳す時にでも、さまざまな工夫をされています。
谷口さんが仰るに、作者であるルイザは、まさか自分の作品が150年後に英語圏以外の国に翻訳されるとは夢にも思っていなかったであろう、と仰います。
なので、英語圏の方には暗黙的に理解できる内容が、作中にいくつも見られます。

谷口さんは、ご自身が読者だった頃に、「いまひとつ、わかりづらい」と感じていた経験をたくさんしていらっしゃることから、翻訳をされるときに、原書に加えて、英語圏の暗黙の了解となっている部分も、日本語で読まれる方に伝える工夫を施されています。

いろんな時代に、いろんな方が、同じ原書を訳した本が出ていますが、
「谷口さんの訳された本が一番好きです」
と仰る方が多い理由のひとつが、この谷口さんの配慮なのかもしれません。