U_U 's blog

東京都文京区小日向のGalleria Caffe U_U(ユー)の日々を綴るblogです

谷口由美子

【Salone report】 2023.6.27 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

6月27日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はノーマ・ジョンストンの「ロッタの夢ー オルコット一家に出会った少女」でした。

この本は新刊です。
谷口さんがこの本の原作を手に入れたのは1990年代のこと。ちょうど、若草物語に関する写真集を作っていた時期に当たるそうです。
この本の出版に時間がかかった理由の一つが、「ノーマ・ジョンストンさんの所在が特定できていない」ということ。ノーマ・ジョンストンさんが書かれた作品は多数あるのですが、本人の特定ができていない作家でもあるそうです。

作品自体のお話は、若草物語の作者、ルイザ・メイ・オルコットを含むオルコット一家がボストンに住んでいた時代に、ドイツからの移民家族とアイルランドからの移民家族とオルコット家の交流を描いたものです。
オルコット一家に関する部分はノンフィクションですが、ロッタを初めとするドイツからの移民家族、そしてアイルランドからの移民家族はモデルがいたのかもしれませんがフィクションです。
しかし、お話は、あたかもノンフィクションかのように、実にリアルに感じられる内容となっています。

そのひとつには、オルコット家が実際に暮らしていたボストンの当時の様子や街並みのレファランスがしっかりと描かれていることもあります。
谷口さんが訳された「ルイザー若草物語を生きた人」の原作者でもあるノーマ・ジョンストンですから、ルイザに関する手紙や日記もしっかりと読み込んでいますので、その辺りも「ロッタの夢ー オルコット一家に出会った少女」のリアルさを与えているのかもしれません。

小説の中で、第12章でロッタ少女の誕生日をオルコット一家も一緒に祝うシーンがあるのですが、この部分、若草物語を読んでいる方には、うれしくなるようなレファランスが出てきます。

また、この本の原題は「Lotta's Progress」なのですが、これは「The Pligrim's Progress」を意識してノーマ・ジョンストンが付けているタイトルとのことです。
The Pligrim's Progress」はオルコット一家の日常でも、そしてオルコット一家の日常をベースにした「若草物語」にもレファランスとして出てくる小説。そんなところにも、作者ノーマ・ジョンストンのルイザへの想いが現れている物語です。

【Salone report】 2023.4.18 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

4月18日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はディック・キング=スミスの「白い馬をさがせ」と「学校ねずみのフローラ」でした。

集まった方どうしの自己紹介からの流れで、「児童文学」のお話から今日は茶論トークが始まりました。
「児童文学」は“子どものための文学”でありますが、決して“次元の低い本”ではありません。
その例えとして用いられるのは「お粥」。
お粥はお米をより嚙み砕きやすく、消化しやすいように調理した方法ですが、児童文学も同じように、しっかりした価値を子どもにも消化しやすいように書いた文学、それが児童文学なのです。

そんな児童文学の良書を子どもに読ませたい!
と熱意と行動力のある方が創業された出版社の社長さんと谷口さんが出会ったのは、アメリカで開催された児童文学のセミナー会場。
きっかけは、谷口さんが訳され出版されていた本で絶版となっていた作品を、「ぜひうちで再版させてほしい」と直々にお願いされたこと、だそうです。

今回、谷口さんが紹介くださった本は、その社長さんから「谷口さんに訳してほしい」と依頼されて引き受けた作品なのだそうです。

ディック・キング=スミスは動物を主役にした作品に長けた英国の児童文学作家です。
子豚が主役の映画となった「ベイブ」の原作者といえば、ご存じの方も多いかもしれません。

谷口さんが訳された2冊も、動物の目から見た世界が瑞々しく描かれた作品です。

学校ねずみのフローラ」は、ねずみが主役のお話。
人間の初等教育学校で暮らすねずみの一匹フローラは、人間の子どもたちが習う教材を見聞きすることで「人間の言葉」を読むことができるようになります。
そうして教養を身に着けたフローラは、人間の殺鼠行為から身を守ることができました。
その方法とは・・・、ぜひ、作品を読んでくださいね。

白い馬をさがせ」は、イギリスに実際にある白亜が馬の形に見える丘、その丘の近くに暮らす飼い主のもとに戻る冒険をする犬が主役のお話です。
シャムネコと伝書鳩と途中で出会う犬と一緒に自分の飼い主の家にたどり着くまでの冒険譚です。

動物が主役の本では、人間の罠にかかったりや狩猟の対象にされたりといったことも生々しく織り交ぜられるのも特徴ですが、今回谷口さんが紹介された2冊にもしっかり登場するそうです。

【Salone report】 2023.2.21 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

2月21日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はエリーナ・ポーターの「少女ポリアンナ」そして「ポリアンナの青春」でした。

今では「ポリアンナ」の名前で通っていますが、村岡 花子さんが訳されたときは「パレアナ」と表記されて出版されています。
英語圏では「ポリー」という発音はなく、村岡 花子さんは英語圏の発音をカタカナにされたようです。

日本語表記が「ポリアンナ」に変わったのは、この原作を映画化した作品が日本で上映されたのを機のようです。
ポリアンナの母であるジェニーの二人の妹の名前が「ポリー」と「アンナ」で、その二人の名前を続けて娘に名付けたのが「ポリアンナ」。なので、日本語では「パレおばさん」はちょっと違和感が強いかもしれない・・・という翻訳あるあるの影響もありそうです。

原作は1913年に出版されたのですが、この「ポリアンナ」の児童文学は英語圏ではかなり認知されているようで、「Pollyanna」のキャラクターのような人のことを指す言葉として、英語の辞書にそのまま「Pollyanna」という単語が登録されているほどです。
(どんな意味かは、ぜひみなさん、検索してみてください)

また、ポリアンナが作品中で随所にやってみせる「Glad Game」も、英語圏ではかなり認識されていて、スピーチなどでも使われることが多いそうです。

Glad Game」はポリアンナが父から教わった、どんな苦境に陥っても、その中から喜びを探すゲームで、 日本語では 「喜びの遊び」 「『うれしい探し』ゲーム」 「うれしくなるゲーム」 「よかったさがし」 などと訳されています。

少女ポリアンナ」の方は、日本でもアニメ放送があったので知っている方も多いのですが、実は続編として「ポリアンナの青春」もあり、こちらはロマンスもいっぱいあって愉しい内容となっています。

文学作品は「文字」だけしか、登場人物のキャラクターを表す術がありません。
なので、文学作品では、人物のキャラクターを表す方法に「口癖」を持たせる場合もあるそうです。
少女ポリアンナ」の中で、ポリアンナを預かることになったポリーおばさんの家の使用人のナンシーは、原作では「I am ・・・・. I am.」とか「I will ・・・・. I will.」と繰り返す口癖を与えられています。このナンシーの口癖を谷口さんは翻訳の中で反映されています。その方法は・・・
ぜひ、手に入れて読んでみてくださいね。

【Salone report】2021.12.20 「大草原の風トリオ コンサート」

12月20日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」のスペシャルヴァージョン、「大草原の風トリオ・コンサート」を開催いたしました。
来場下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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10作のシリーズ本「大草原のローラ」の話には、とうさんがヴァイオリンでさまざまな曲を演奏するシーンが出てきます。その数、なんと120曲!とも言われています。
その音楽を聴いてご存知の方は曲名を読むと音楽が頭の中に流れるかもしれません。
ですが、残念なことに、物語を読んでいるだけでは音楽は聞こえてきませんから、その曲をご存知ないと豊かな音楽のシーンを味わうことができません。

物語を読みながら頭の中で曲が鳴るとより物語の世界が活き活きとして愉しくなる、はず。
谷口さんはヴァイオリニストの福山 陽子さん、そしてピアニストの菅原 真理子さんとともに「大草原の風トリオ」を結成して、「大草原のローラ」の物語を耳でも愉しむ活動を行っています。
福山さんが“とうさん”、菅原さんが“かあさん”、そして谷口さんが“ローラ”となって、ルックスからもう物語「大草原のローラ」の世界へと誘います♪


コンサートは2部構成。

第1部は、谷口ローラが進行役となって、出展物語と曲名を紹介して、とうさんとかあさんが演奏していきます。
物語を知らない方でも、日本では日本オリジナルの歌詞で知られている曲もあったり。
原曲の歌詞の内容を谷口ローラが解説してくださることで、曲の魅力をよりたっぷりと愉しむことができました。


「大草原のローラ」シリーズを音で愉しんだあとのブレイクタイムで、ローラ家族も含めてみんなでお茶タイム。
今回のお茶請けスイーツは、ローラが母となってからのレシピをまとめた「ようこそ ローラのキッチンへ」の中から、「りんごのさかさまケーキ」を創りました。

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その名の通り、焼きあがった最後にひっくり返してできあがるケーキ。
生地には砂糖を使わないのに、とても甘くおいしいケーキでした。


ティーブレイクのあとは第2部、音楽ファンタジー「大草原の小さな町」
本の訳者でもある谷口ローラがお話をギュッと要約し、それに菅原かあさんが音楽を付けた朗読音楽劇。
「長い冬」に続いて第2弾が今回世界初演となりました。
今回は、その中でもダイジェスト版として一部をお披露目くださいました。

そして、続いては作品には直接出てはいないものの、ローラの時代に関係する曲が、その紹介とともに演奏されました。


ご来場くださいました皆さまとともに、音で聴く「大草原のローラ」の世界のひとときを愉しむことができました♪
ありがとうございます♪

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プログラム
<第1部>
1. Yankee Doodle 「大きな森の小さな家」より
2. Old Grimes 「大きな森の小さな家」より
3. The Girl Left Behind Me 「プラム・クリークの土手で」より
4. Highland Mary 「シルバー・レイクの岸辺で」より
5. The Old Gray Mare 「長い冬」より
6. Where There's a Will, There's a Way 「長い冬」より

<ティーブレイク>

<第2部>
音楽ファンタジー「大草原の小さな町」より

7. Turkey in the Straw
8. Mollie Darling
9. Marching Through Georgia 「大草原の小さな町」より

<アンコール>
White Christmas 
Mollie Darling

【Salone report】 2022.10.25 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

10月25日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はキャロル・ライリー・ブリンクの「アーマのうそ」でした。

キャロル・ライリー・ブリンクは、日本ではあまり知られていないアメリカの児童文学作家ですが、アメリカ合衆国における最も優れた児童文学の著者に与えられる賞「ニューベリー賞」も受賞している、アメリカの児童文学黄金期に活躍した作家です。

谷口さんはキャロル・ライリー・ブリンクの本を2冊、「ミンティたちの森のかくれ家」、「小さいママと無人島」のタイトルで訳本を出され、茶論トークでも紹介くださっています。
今回は3冊目の訳本で、訳本としては初訳です。

キャロル・ライリー・ブリンクは10歳くらいの少女を主人公とした児童文学の優れたストーリーテラーとして知られ、この「アーマのうそ」のアーマもまたステキな主人公を務めます。
引っ越したばかりで人見知りがちな、ちょっと冴えない感じで表現されるアーマが、同じ学校に通うジュディに話しかけられ物語が動き始めます。ジュディにアーマが語った“ちょっとしたうそ”がきっかけで、アーマは学校中さらには街中から注目を集めるようになるのですが・・・
とあらすじを聞くだけでもワクワクしてきませんか?


アーマのうそ」は出版された時期は古いのですが、翻訳本として出版することで「新しい本」として甦る、そんな役割も翻訳本にはあると、谷口さんは仰いました。

翻訳するにあたっては、原文で成立するものを日本語に置き換えても成立するためには、原書にはない“工夫”が必要になります。そんな“工夫”があるからこそ、「日本語で読んでも面白い本」になるのです。
今回の「アーマのうそ」の翻訳で、谷口さんがなされた“工夫”の一端もご紹介くださいました。

キャロル・ライリー・ブリンクがニューベリー賞を受賞した作品は、谷口さんが訳された3冊にはありません。その優れた作品を訳すには、児童文学にはあるあるな題材がネックとなっています。
文学作品の時代背景の人々の当時の考え方を、児童文学を読む子どもたちに
知らせない方がいいのか?
知らせる方がいいのか?

いつも議題になる問題です
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