U_U 's blog

東京都文京区小日向のGalleria Caffe U_U(ユー)の日々を綴るblogです

谷口由美子

【Salone report】 2023.2.21 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

2月21日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はエリーナ・ポーターの「少女ポリアンナ」そして「ポリアンナの青春」でした。

今では「ポリアンナ」の名前で通っていますが、村岡 花子さんが訳されたときは「パレアナ」と表記されて出版されています。
英語圏では「ポリー」という発音はなく、村岡 花子さんは英語圏の発音をカタカナにされたようです。

日本語表記が「ポリアンナ」に変わったのは、この原作を映画化した作品が日本で上映されたのを機のようです。
ポリアンナの母であるジェニーの二人の妹の名前が「ポリー」と「アンナ」で、その二人の名前を続けて娘に名付けたのが「ポリアンナ」。なので、日本語では「パレおばさん」はちょっと違和感が強いかもしれない・・・という翻訳あるあるの影響もありそうです。

原作は1913年に出版されたのですが、この「ポリアンナ」の児童文学は英語圏ではかなり認知されているようで、「Pollyanna」のキャラクターのような人のことを指す言葉として、英語の辞書にそのまま「Pollyanna」という単語が登録されているほどです。
(どんな意味かは、ぜひみなさん、検索してみてください)

また、ポリアンナが作品中で随所にやってみせる「Glad Game」も、英語圏ではかなり認識されていて、スピーチなどでも使われることが多いそうです。

Glad Game」はポリアンナが父から教わった、どんな苦境に陥っても、その中から喜びを探すゲームで、 日本語では 「喜びの遊び」 「『うれしい探し』ゲーム」 「うれしくなるゲーム」 「よかったさがし」 などと訳されています。

少女ポリアンナ」の方は、日本でもアニメ放送があったので知っている方も多いのですが、実は続編として「ポリアンナの青春」もあり、こちらはロマンスもいっぱいあって愉しい内容となっています。

文学作品は「文字」だけしか、登場人物のキャラクターを表す術がありません。
なので、文学作品では、人物のキャラクターを表す方法に「口癖」を持たせる場合もあるそうです。
少女ポリアンナ」の中で、ポリアンナを預かることになったポリーおばさんの家の使用人のナンシーは、原作では「I am ・・・・. I am.」とか「I will ・・・・. I will.」と繰り返す口癖を与えられています。このナンシーの口癖を谷口さんは翻訳の中で反映されています。その方法は・・・
ぜひ、手に入れて読んでみてくださいね。

【Salone report】2021.12.20 「大草原の風トリオ コンサート」

12月20日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」のスペシャルヴァージョン、「大草原の風トリオ・コンサート」を開催いたしました。
来場下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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10作のシリーズ本「大草原のローラ」の話には、とうさんがヴァイオリンでさまざまな曲を演奏するシーンが出てきます。その数、なんと120曲!とも言われています。
その音楽を聴いてご存知の方は曲名を読むと音楽が頭の中に流れるかもしれません。
ですが、残念なことに、物語を読んでいるだけでは音楽は聞こえてきませんから、その曲をご存知ないと豊かな音楽のシーンを味わうことができません。

物語を読みながら頭の中で曲が鳴るとより物語の世界が活き活きとして愉しくなる、はず。
谷口さんはヴァイオリニストの福山 陽子さん、そしてピアニストの菅原 真理子さんとともに「大草原の風トリオ」を結成して、「大草原のローラ」の物語を耳でも愉しむ活動を行っています。
福山さんが“とうさん”、菅原さんが“かあさん”、そして谷口さんが“ローラ”となって、ルックスからもう物語「大草原のローラ」の世界へと誘います♪


コンサートは2部構成。

第1部は、谷口ローラが進行役となって、出展物語と曲名を紹介して、とうさんとかあさんが演奏していきます。
物語を知らない方でも、日本では日本オリジナルの歌詞で知られている曲もあったり。
原曲の歌詞の内容を谷口ローラが解説してくださることで、曲の魅力をよりたっぷりと愉しむことができました。


「大草原のローラ」シリーズを音で愉しんだあとのブレイクタイムで、ローラ家族も含めてみんなでお茶タイム。
今回のお茶請けスイーツは、ローラが母となってからのレシピをまとめた「ようこそ ローラのキッチンへ」の中から、「りんごのさかさまケーキ」を創りました。

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その名の通り、焼きあがった最後にひっくり返してできあがるケーキ。
生地には砂糖を使わないのに、とても甘くおいしいケーキでした。


ティーブレイクのあとは第2部、音楽ファンタジー「大草原の小さな町」
本の訳者でもある谷口ローラがお話をギュッと要約し、それに菅原かあさんが音楽を付けた朗読音楽劇。
「長い冬」に続いて第2弾が今回世界初演となりました。
今回は、その中でもダイジェスト版として一部をお披露目くださいました。

そして、続いては作品には直接出てはいないものの、ローラの時代に関係する曲が、その紹介とともに演奏されました。


ご来場くださいました皆さまとともに、音で聴く「大草原のローラ」の世界のひとときを愉しむことができました♪
ありがとうございます♪

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プログラム
<第1部>
1. Yankee Doodle 「大きな森の小さな家」より
2. Old Grimes 「大きな森の小さな家」より
3. The Girl Left Behind Me 「プラム・クリークの土手で」より
4. Highland Mary 「シルバー・レイクの岸辺で」より
5. The Old Gray Mare 「長い冬」より
6. Where There's a Will, There's a Way 「長い冬」より

<ティーブレイク>

<第2部>
音楽ファンタジー「大草原の小さな町」より

7. Turkey in the Straw
8. Mollie Darling
9. Marching Through Georgia 「大草原の小さな町」より

<アンコール>
White Christmas 
Mollie Darling

【Salone report】 2022.10.25 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

10月25日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学はキャロル・ライリー・ブリンクの「アーマのうそ」でした。

キャロル・ライリー・ブリンクは、日本ではあまり知られていないアメリカの児童文学作家ですが、アメリカ合衆国における最も優れた児童文学の著者に与えられる賞「ニューベリー賞」も受賞している、アメリカの児童文学黄金期に活躍した作家です。

谷口さんはキャロル・ライリー・ブリンクの本を2冊、「ミンティたちの森のかくれ家」、「小さいママと無人島」のタイトルで訳本を出され、茶論トークでも紹介くださっています。
今回は3冊目の訳本で、訳本としては初訳です。

キャロル・ライリー・ブリンクは10歳くらいの少女を主人公とした児童文学の優れたストーリーテラーとして知られ、この「アーマのうそ」のアーマもまたステキな主人公を務めます。
引っ越したばかりで人見知りがちな、ちょっと冴えない感じで表現されるアーマが、同じ学校に通うジュディに話しかけられ物語が動き始めます。ジュディにアーマが語った“ちょっとしたうそ”がきっかけで、アーマは学校中さらには街中から注目を集めるようになるのですが・・・
とあらすじを聞くだけでもワクワクしてきませんか?


アーマのうそ」は出版された時期は古いのですが、翻訳本として出版することで「新しい本」として甦る、そんな役割も翻訳本にはあると、谷口さんは仰いました。

翻訳するにあたっては、原文で成立するものを日本語に置き換えても成立するためには、原書にはない“工夫”が必要になります。そんな“工夫”があるからこそ、「日本語で読んでも面白い本」になるのです。
今回の「アーマのうそ」の翻訳で、谷口さんがなされた“工夫”の一端もご紹介くださいました。

キャロル・ライリー・ブリンクがニューベリー賞を受賞した作品は、谷口さんが訳された3冊にはありません。その優れた作品を訳すには、児童文学にはあるあるな題材がネックとなっています。
文学作品の時代背景の人々の当時の考え方を、児童文学を読む子どもたちに
知らせない方がいいのか?
知らせる方がいいのか?

いつも議題になる問題です

【Salone report】 2022.6.28 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

6月28日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学は「あしながおじさん」でした。

あしながおじさん」は、ジーン・ウェブスターが1912年に発表した児童文学作品。
孤児院で育った少女ジュディの文才が一人の資産家の目にとまり、毎月手紙を書くことを条件に大学進学のための奨学金を受ける物語です。
日本では1919年に初めて翻訳本が出ていて、その時の翻訳本のタイトルは、原書のタイトル「Daddy-Long-Legs」の虫の名前の日本語訳と資産家の仮の名前ジョン・スミスから「蚊とんぼスミス」。
1933年の翻訳本から「あしながおじさん」が使われ、以降、そのタイトルが使われています。

谷口さんも「あしながおじさん」のタイトルで翻訳、表紙のデザインは原書のウェブスターの手による挿し絵を使用しています。


谷口さんが常々仰っているのは、翻訳本は「日本語の文学として愉しめることが大切」ということ。
特に児童文学を読む子どもたちは、外国を舞台にした日本の作品と思って読む可能性もあるのですから。
ですので、原書は厳然として存在するのだけれども、翻訳本は時代の読み手に合わせた言葉で書かれていってよいものであるし、何年にもわたって翻訳され続けるということは、それほどに原書の物語が魅力的であることになります。

今回の茶論トークでは、谷口さんが1919年に出版された翻訳本と谷口さんの翻訳本の同じ個所を読み比べてくださいました。それは主人公のジュディが、ほかの子たちはもうすでに読んでいる文学作品を時間を作って読んでいる、というシーン。
原書の中で、ジュディがおじさまに「「Little Women」を読んだから、もうライムのピクルスのこともわかるわ」と報告しているシーン。
日本で「Little Wemen」が「若草物語」のタイトルで出されたのは1934年のこと。
なので、1919年当時は違うタイトルの翻訳本名になっています。


あしながおじさん」翻訳にあたっての、谷口さんならではの工夫も随所になされています。
たとえば、ジュディが書いたものとしてウェブスターが書いている手紙中の挿し絵のキャプションの翻訳の手書きは、女子大生ジュディが書いたようにするためにした工夫だったり。
ジュディがおじさま宛に書くときに、いろいろな感情(時には怒って書いているときも)で原書に書いてあるのを、宛名で表現したり。

細かなところでは、作品中、アラバマ州の“ビショップ”が講演に訪れたことを報告する手紙を訳するにあたり、カトリックとプロテスタントでは“ビショップ”の日本語訳が異なることから、ジュディの通う大学のモデルにしたウェブスターの母校ヴァッサー・カレッジにウェブスターが学んでいた当時カトリックとプロテスタントのどちらであったかを手紙にて問い合わせたそうです。
その答えは・・・、谷口さんの翻訳本で確かめてみてください。


また「あしながおじさん」でいつも話題になるのが、続編「Dear Enemy」の訳本が今の時代出すのが難しい、という話です。
それは、その当時のアメリカの時代状況を反映した箇所が、今の時代では差別的表現になってしまうため、です。
このように、翻訳されていないために知られていない英米児童文学もあるのです。

【Salone report】 2022.4.26 茶論トーク 英米児童文学の愉しみ

4月26日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の愉しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

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今回、谷口さんが取り上げました英米児童文学は「大草原のローラの娘ローズ、そして“わかれ道”」でした。

「大草原のローラ」シリーズの草稿を解説とともに出版された「パイオニア・ガール」のおかげもあって、ローラの草稿を文学作品へと磨くのに、多大な貢献をしたローラの娘 ローズの功績に正しく光が当たり始めているそうです。

谷口さんはアメリカのローラ研究家の方との共同で、ローズに関する本を執筆されています。
まずはその本から、ローズの実際の人となりのお話をしてくださいました。
ローズは今でいうところのキャリアウーマンで、結婚を経験するもすぐに離婚。
1920年代にヨーロッパの各地を旅するなど、その行動力とさらにはジャーナリズム力はそうとうのものだったそうです。


ローラが「大草原のローラ」シリーズの1作目となる「大きな森の小さな家」が出版されたのは1932年。
そして、ローズの自身の自伝的作品ともいえる「わかれ道」は1919年に出版されています。
もともとは雑誌に連載していたもので、それをまとめて単行本として出版するにあたり、ローズは結末を60ページも加筆しているそうです。

この意味においては、ローズは、事実の草稿を元に、フィクションを加味しながら、誰もが愉しめる文学作品にするスキルがすでに磨かれていた、と言えます。


わかれ道」についてのお話をひとつしますと。
登場人物は、ローズを思わせる女性、後にローズの夫となる人を思わせる男性は実際の名前と変えています。そして、もうひとり、ポールという登場人物がいるのですが、このポールは、ローズの実際の人生において実在する人物の名前を変えずに登場させています。
このポール、誰だかわかりますか?
その人は、土地を求めて馬車の旅に出る-ローラの旅日記と,娘ローズによる記録をおさめるノンフィクション作品「わが家への道」に登場しています。
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