本日は、翻訳家 谷口 由美子さんが自ら手掛けられた英米児童文学の魅力をお伝え下さる茶論(サロン)トーク、「茶論トーク 英米児童文学の楽しみ」を開催致しました。
参加下さいました皆さま、ありがとうございます♪

本日、谷口さんがご紹介くださいましたのは、レベッカ・コーディルの「ケティのはるかな旅」です。

160419002

谷口さんのポリシーのひとつが、「原作者が生きている時は本人と会う」です。
谷口さんは、この本の原作者レベッカ・コーディルさんともお会いされ、この本を訳すにあたって、とても貴重な情報をご本人からいただいたそうです。

「ケティのはるかな旅(原題 the far-off land)」は、レベッカ・コーディルさんが一番好きで一番力を入れていた本とのこと。谷口さんは、アメリカの友人からこの本を勧められたそうです。

本の舞台は1770年、まだ独立する前のアメリカ。
16歳の孤児ケティが14年ぶりに突然訪ねてきた兄とともに、テネシー川を下って新しい土地に移り住む旅の話のフィクションです。ただし、レベッカ・コーディルさんはこの本を書くにあたり、綿密な時代考証と調査を元に下書きをしているそうです。
当時の言葉で「インディアン」と白人との抗争なども織り込まれています。
インディアンの自然と共存する生き方と白人の自然を克服する生き方の相違も、よく表されています。

翻訳本は1989年に出版されましたが、それはその当時、日本において「インディアンもの」がブームになっていたこともあるそうです。
翻訳本が出たのは20世紀でしたが、その本の中で、「21世紀は差別のことを問う文学になる」と述べられています。この「ケティのはるかな旅」はまさにそのひとつと言えます。

レベッカ・コーディルさんは日本ではあまり知られていませんが、ほかにもステキな本を出されています。
今回、谷口さんが紹介してくださったのは3冊。
そのうち2冊は、「ボニー・シリーズ」です。
5人兄弟の末っ子のボニーが4歳の時の話が第一作となる4作シリーズのうち、翻訳本が出たのは最初の2冊。学校に行きたくてたまらないボニーは、レベッカ・コーディルさん本人がベースになっているそうです。
もう一冊は、「リサと柱時計の魔法」。
こちらは、孤児であるリサがホームステイした先のお家で、とにかく時計の時間を気にして行動している御夫婦と、「時間は時計で計ることができない大切なもの」という考えで生きているおばあさんが一緒に暮らしているお話です。
「人間らしさを取り戻す」という貴重なメッセージは、現在にも通じるレベッカ・コーディルさんからのメッセージだと思います。

いずれの本も今では中古本市場で手に入れる本となっている、とのことです。